家や学校以外の居場所(サードプレイス)として

家や学校以外の居場所(サードプレイス)として

家や学校に居場所がない

 不登校というほどではないが、学校が苦手で行きたくない。行っても楽しくない。毎日学校に行くのが苦痛で仕方がない…。そういう悩みを抱えている中学生・高校生は多いと思います。しかしそれを親に相談はしたくないし、そもそも家も居心地が良くない…。これもまた、たくさんの生徒たちから聞いてきた言葉です。
 
 これは別に、家庭環境に問題があるというわけではありません。思春期を迎え、自立心の芽生えた中学生・高校生にとって、家族というのは距離を置きたくなる存在であり、それはごく普通の発育の段階に過ぎません。

 実際に私たちの生徒さんでも、教室にいる時はすごく明るくて、周りに対しても気遣いができる子が、親御さんの話を聞くと「家では何も話してくれなくて…」ということはよくあります。ただそれゆえに、悩みをどこにも吐き出すことができず、自分の内側に抱え込んでしまうことがあるのも事実です。

 そんな時に、家でも学校でもない場所=サードプレイスがあることは重要です。

日常(家・学校)から切り離された環境だからこそ、自分らしくいることができる。

 サードプレイスというのはアメリカで提唱された考え方で、元々は大人が仕事のストレスをリフレッシュするために持つ第三の居場所のことです。

【ファーストプレイス】生活の場である家
【セカンドプレイス】職場や学校など、自宅以外で長い時間過ごす場所
【サードプレイス】義務ではなく、自分の意思で行く心安らぐ場所

 ですが私たちは、様々な悩みを抱える中学生・高校生にこそ、サードプレイスは重要だと思っています。

 学校での悩みを、学校で話すのは勇気がいりますよね? また、本当は“こうありたい”と思っているのに、それを家や学校など“ずっと身を置いている場所”で見せて変に思われてしまったら…ずっとその視線に耐えながら生活しなくてはならない。それは大人だって耐え難いことです。でもそういった日常から切り離された場所だったら…ましてただの習い事なら、嫌になったら辞めればいいだけです。

全ての個性にYESを言う

 私たちの教室には、様々な悩みを抱えた生徒さんが通い、卒業していきました。学校に通えていない子もいましたし、親御さんと不仲で喧嘩ばかりしている子もいました。
そんな生徒さんたちへの私たちのアプローチは、ただ一つ。

「別にいいんじゃない?」

 どんな悩みや問題を抱えていようとも、それはそれとして受け入れる。学校の先生に言ったらドン引きされるような内容も気にしない。話を聞いて欲しければ聞くし、言いたくなければ聞かない。ダンスや演劇を教えはしますが、それは自己表現の手段であって、「これができなくてはいけない」と強制するわけではありません。教室内で他の生徒さんと仲良くなってもらう必要もないですし、淡々とレッスンを受けて帰る子もいます。

 私たちの基本スタンスは「好きにしていいよ」です。ただ一つ、約束できるのは、私たちは常に生徒たちの味方であるということです。(それは必ずしも、家庭や学校の味方であることを意味しません)私たちは講師と名乗ってはいますが、教室での在り方は「(だいぶ)年上の友達」です。多感な時期を過ごしている中学生・高校生にとって、うるさいことを言わず、でも困った時には相談に乗ってくれる大人がいるというのは、大事なことではないでしょうか?

 もちろん、ダンスや演劇を楽しみたいなら、思いっきり教えます。表現活動の素晴らしいところは、どんな個性も一つの“キャラクター”として成立できるところにあります。ここでは「違い=強み」であって欠点ではありません。

 通っている学校も、家庭環境も、考え方や価値観も違う。そんな生徒さんたちが集まっていると、「周りと違っていてもいいんだな」と感じられますし、どんなに違った環境にいても、一緒に一つの作品を作り上げることができる。これはとても貴重な体験です。実際、発表会を終えた後の生徒たちの絆の深まり方はすごいものがあります。

Screenshot

あるがままでいられる、居場所(サードプレイス)として

 私たちの教室は、決して演劇やダンスを専門的に学ぶ教室ではありません。コミュニケーション能力を育むため、殻の中に閉じこもりがちな自分を表現する手段を手に入れるため、そしてありのままの自分を出せる居場所(サードプレイス)として…。様々な使い方をしてもらえたらと思っています。

 そしてそういう居場所は、実は世の中にたくさんあります。この教室が合わなければ、別の場所へ…。今、自分がいる環境だけが世の中の全てではなく、たくさんの居場所があることを知ってもらえればと思います。